学会事務センター倒産による本学会の損失に関連するお詫びとお願い
「日本学会事務センター破産被害学会勉強会」報告
平成17年度蛋白質科学会年会ワークショップのテーマ募集のお知らせ
日本蛋白質科学会ニュースレター Vol. 4, No. 5 (204) 発行日 2004年10月22日
学会事務センター倒産による本学会の損失に関連するお詫びとお願い
既に前号のニュースレターでお伝えしておりますように、また新聞報道などでご存じのことと思いますが、学会事務センターが倒産し、経理を委任していた本学会は資産のすべてを失うという深刻な状況に立たされることとなりました。学会センターを全面的に信頼し、学会センターの経理状況や本学会の資産の管理状況は全く把握していませんでした。学会センターに事業を委託していた学会はいずれも被害を被り、特に独自に事務所をもてない中規模の学会の多くが本学会と同様に資産を失うという状況にあります。とはいえ、基本的には本学会の理事会が学会センターに対する監督が不十分であったことが今回の惨状を招いたわけで、責任を痛感しています。理事会を代表して深くお詫び申し上げます。
理事会としては、まず、次回の九州地区で行われる年会の支援を第一とし、学術的な活動に支障を生じないよう全力を挙げます。また、出来る限り男女共同参画に関する活動など研究環境改善に関わる活動も早期に従来の水準に戻せるよう努力を重ねる所存であります。これと平行して理事会は他学会とも協力し、旧学会事務センターおよび法人の監督官庁である文部科学省の責任追及にも力を入れる所存であります。
学会事務センターの破産に至る経緯は下記「参考」の通りであります。
理事会は今後、学会の経理再建に向けて最善の努力を尽くして参りますが、現在、連絡のための郵送費にも事欠く状況であり、当面の危機を乗り越えるため、会員の皆様に以下のお願いをすることに致しました。いろいろ出費が重なります折りに大変恐縮でありますが、会員の方々に一口五千円のカンパをお願い致します。当然のことですが、このカンパは全く随意のもので、締めきり後に集まった総額だけをご報告して、どなたがいくら拠出されたかというデータは一切公表致しません。本学会の運営を立て直すために、カンパにおいても理事は相応の貢献をする所存です。(理事の方には4口以上をお願い致します。)集まりました基金は別会計とし、当面、九州での年会補助金の捻出を最優先と致します。
下記郵便口座へお振込み頂くか、あるいは近日中に郵送される振込用紙をご利用になり、お振込みをお願い致します。
- <振込先郵便口座番号>
- 記号 10110
- 口座番号 95175181
- 名義 日本蛋白質科学会
なお、既に述べましたように、大きな損害は日本蛋白質科学会同様の中規模の学会に多く(特に、医学系の学会が多いようです)、本学会会員の所属される他の関連学会では、被害はありますが、本学会ほど被害は深刻ではないようです。
平成16年10月22日
日本蛋白質科学会会長 大島 泰郎
参考:「学会事務センター破算までの経緯」
既に PSSJ ニュースレター No. 4-3 および No. 4-4 でお伝えしました通り、学会事務センターが破産し、現在破産管財人の管理下にあります。以下にこれまでの経緯をまとめます。
7月3日(土) | 預かり金16億円流用についての新聞報道 |
7月9日付 蛋白質科学会ニュースレターNo. 4-3 | |
7月14日(水) | 学会事務センター光岡知足理事長および寺尾専務理事による東大弥生講堂第1ホールでの「説明会」 |
7月23日(金) | 理事長名で「お預り金の保全について」の説明文による外部機関の債権支援可能性の示唆 |
8月6日(金) | 民事再生法手続き開始の申し立て/同日、東京地方裁判所が保全命令などを発令 |
8月9日(月) | 同裁判所が民事再生法手続開始申し立てを棄却、保全管理命令発令 |
8月13日付 蛋白質科学会ニュースレターNo. 4-4 | |
8月17日(火) | 保全管理命令の異議申立期間終了により、破算成立。保全管理人はこの日より破算管財人となる。 |
同日 | 新宿厚生年金会館で破産管財人および弁護士から説明。 |
学会事務センターの平成16年5月31日現在の負債の状況は下記の通りです。
- 担保権(根抵当権)付債権者2名 合計4億8千万円
- リース債権者2名 合計2億4千7百万円
- 労働債権(未払い賃金等)債権者112名 合計3億3千万円
- 租税公租公課 債権者2名 合計1千59万円
- 一般債権(学会預かり金などを含む)債権者979名
合計19億3千2百万円 - 合計 債権者総数1097名 債権総額30億86万円
現在の学会事務センターの預金は約1億5千万円で、学会預かり金の順位は上記5位であるため、当学会の預かり金約1千3百万円(平成16年5月31日現在)が一部でも返還されることは絶望的となりました。学会会費などは1つの口座にまとめて振り込まれて「預かり金」の形となっており、破産管財人はこの口座の預金が他の入金と区別できないために学会センター資産として差し押さえるという立場を取っていますが、これについては専門家の意見も分かれるところらしく、今後法廷で争われる可能性があります。
学会会費などを学会事務センターが1つの口座にまとめて振り込んでもらう形を取っていたことについては理由があり、郵便局では入金が10万件を越える場合には記録が磁気テープで渡されるのに対し、学会ごとの口座に振り込まれた場合には学会事務センターが一人一人の入金の記録を手作業で入力するという膨大な事務作業を負うことになるためである、ということです。なお、学会事務センター職員は8月9日をもって全員解雇となりましたが、現在、学会事務の円滑な引き継ぎのために8月末日まで破産管財人に臨時に雇用されるという形になっております。
蛋白質科学会としましては、学会事務センター責任者(旧常任理事ら)の訴訟などの問題は、破産管財人の動きを見守りながら、他の学会と連携して行っていく所存であります。
次第に事件の背景が明らかになってきましたが、学会事務センターの財政上の問題は既に10年以上前の学会事務センタービルの建設に伴う借金の返済問題に端を発しているということです。詳細は不明ですが、経理が一部の常任理事の手に委ねられ、会計監査の際の勧告も無視され、無理な事業の拡張、関連会社への融資の焦げ付きなどが原因で、返済に「学会預かり金」が流用されるようになったようです。学会事務センターの責任問題の解明は過去10年の経理の調査を待たなければならず、時間がかかることが予想されます。
「日本学会事務センター破産被害学会勉強会」報告
去る9月22日(水)午後3時半より、東京大学農学部1号館において、日本地形学連合総務主幹の倉茂氏の呼びかけにより、「日本学会事務センター破産被害学会勉強会」が開催され、参加学会関係者で討議の結果、「被害学会連絡協議会」を作ること、この中から幹事学会を組織することなどが決められましたので、お知らせ致します。
- 参加学会数は40学会であり、蛋白質科学会からは有坂と桑島が出席した。
- 前半は、破産管財人の竹村弁護士からの現状報告、破産の法的処理に詳しい田頭氏(上智大)から破産手続きの法的処理に関する説明、破産管財人の補助業務など実務経験のある権田氏から破産手続きの実務に関する説明があった。会場には報道関係者が来ていたが竹村氏等が強く難色を示したため、前半の部分は報道関係者をシャットアウトして進められた。
- 前半の話からは、結局以下のことがわかった。
- 学会事務センターの資産は少し増えて2億弱と予想されるが被害学会の預け金の返還はできることにはならない。資産の整理を進めているので、正確な額は11月のミーティングで報告する。
- 破産が宣告された日以降に学会事務センターに入金となった学会のお金は、事務センターの預金とは明確に区別がつくので、各学会に返還する。
- 学会事務センターに預金通帳の形で預けられていたものも事務センターの資産とは区別がつくので、各学会に返還する。しかし、学会事務センターの預金口座に入金されていた学会のお金は事務センターのお金と区別がつかないので、一般破産債権として扱うことになり、実質上学会に返還されるお金はゼロと期待される。破産手続きにおける各種債権者の優先順位は、担保付債券(抵当権など)、財団債権、優先的破産債権、一般破産債権の順であり、優先順位の高いものから順に行くとゼロになってしまうとのことです。
- 事務センターの前常任理事など責任者を訴えるという話があるが、前半の3名の話はこれには大変後ろ向きであった。「個人的にお金を使い込んだ形跡はないし、背任があったとは認められない」(竹村氏)、「事務センターの会計報告も特に大きな間違いはなかった。専門家が見たら矛盾に気がつくが、貸借対照表そのものに不正な記述があったわけではない」(竹村氏)、「個人を訴えるには、不正の証拠をつかむことと訴えられた人が財産を持っていることが前提だが、今回の場合これらいずれも成り立たない」(竹村氏、権田氏)など、などです。
- 後半は、前半の竹村氏、田頭氏、権田氏の三名が席を外し、報道陣が入場して始められた。文科省に直接交渉する必要がある、Nature などの雑誌にこの現状を記事に載せる、学術会議に訴える、などいろいろな意見が出た。文科省で科研費を当てて援助するという話があるが(実は、締め切りは先週で終わっている)、これは、学術雑誌刊行のためのものであり、今回のような学会の被害を援助するようなものになっていないという意見もあった。
- 結局最初に書いたように、「被害学会連絡協議会」を作ること、この中から幹事学会を組織することなどが決められた。また、その際責任者の訴訟問題もその活動の中に含めてゆくのか、文科省の援助支援を訴える活動だけにとどめるのかを早急にはっきりさせるべきだという意見もあった。
報告者
有坂 文雄、桑島 邦博
平成17年度蛋白質科学会年会ワークショップのテーマ募集のお知らせ
平成17年度日本蛋白質科学会 年会は平成17年6月30日(木)より7月2日(土)まで福岡市「福岡国際会議場」において開催されます。福岡の年会は少し趣を変えて蛋白質の機能に重点をおいた会にしたいと思っております。先日開かれましたプログラム委員会においてシンポジウムとワークショップの概要が決まりましたのでお知らせ致します。
シンポジウム
細胞内で合成された蛋白質が目的地に運ばれて機能し分解されて生涯を終えるまでの過程を通して以下の3つの大きなテーマを取り上げました。それぞれの中に構造・機能・機能障害に起因する病気、などのトピックスを織り込んで議論いたします。1テーマにつき6名程度の演者を予定しております。
- シグナル伝達と蛋白質合成(世話人:神田大輔)
- 細胞内輸送と修飾(世話人:藤木幸夫、三原勝芳)
- 蛋白質の品質管理、分解(世話人:中山敬一)
ワークショップ
1テーマにつき6〜7名の演者を予定しております。
(1)プロテオミクス、(2)オルガネラ、(3)膜蛋白質、(4)細胞極性、(5)リピドシグナリング、(6)バイオイメージング、(7)ホットストラクチャー、(8)プロテインインフォマティクス
公募
上記のテーマに加えて数題のワークショップのテーマを募集いたします。テーマ名と趣旨(200字程度)ならびに予定講演者名(6〜7名)を11月15日までにファックスまたは電子メールにて下記までお送り下さい。
平成17年度年会長
三原 勝芳
公募テーマ送付先
- 岡 敏彦(平成17年度年会総務)
- 〒812-8582 福岡市東区3-1-1
- 九州大学大学院医学研究院分子生命科学教室
- TEL: 092-642-6178
- FAX: 092-642-6183
- E-mail: okat@cell.med.kyushu-u.ac.jp