【お願い】ドライシッパーの適正利用

2021年12月1日

高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所・構造生物学研究センター
高輝度光科学研究センター・タンパク質結晶解析推進室
理化学研究所・放射光科学研究センター・生物系ビームライン基盤グループ
大阪大学・蛋白質研究所

タンパク質結晶回折測定など構造生物の放射光実験では、一般に凍結した測定試料をドライシッパーと呼ぶ専用容器で施設に送付しています。これは放射光測定を含む構造生物研究分野のリモート測定などの DX 化に必要不可欠な試料輸送ツールとなっています。このような状況下で現在、宅配輸送業者によるドライシッパーの輸送拒否が続出しています。

この問題の背景には、「ドライシッパーを液体窒素で満たしたままの状態での輸送を依頼する」というドライシッパーの誤った認識や取扱いが原因で発生した液体窒素漏出事故により宅配輸送業者の安全・安心が脅かされた事案があると予想されます。この様な少数のユーザーによるドライシッパーの不適切な取り扱いが、その輸送担当者の安全を脅かすだけでなく、構造生物をはじめとする全ての低温サンプル輸送を必要とするユーザーの凍結サンプル輸送と研究の推進に支障をきたすものと懸念されます。

そこで、宅配輸送業者が安全かつ安心してドライシッパーの輸送を継続できるためにも、ユーザー一人一人が、「搬送直前に吸着剤に吸着されていない液体窒素を完全に除いた状態で輸送する」という適切なドライシッパーの取扱いを厳守する必要があります。

学会員の皆様には「ドライシッパーは必ず液体窒素を抜いた状態で輸送する」というドライシッパーの適正利用へのご協力を強くお願いします。

ドライシッパーの取扱い等に関する詳細は以下を参照ください。
https://sites.google.com/sbrc.jp/dryshipper-noln2/how-to-dry

参考情報

  • 液体窒素自体は交通機関や運送業者の約款等で危険物(液化ガス)ですが、それを樹脂に吸着させ安全に運べるドライシッパーは、生体試料を始め広く用いられています。その規制も国際航空運送協会(IATA)が2007年に危険物適用を除外しており、現在、国際輸送に支障はなく、国内線を含む航空機内持込も可能です。
  • ドライシッパーは吸着されていない液体窒素を取り除いた状態で、内部のサンプルを安全に極低温を保ったまま輸送できる容器です。液体窒素は除いても10日以上極低温を維持できるように設計されているため、適切な取り扱いにより国内外を問わず放射光施設への凍結試料の輸送で問題を発生することはありません。