東京大学 加藤研究室 九川真衣
この度、昨年度の日本蛋白質科学会年会における若手奨励賞優秀賞の副賞として渡航費のご支援をいただき、2025年6月26日から29日にかけてアメリカ・サンフランシスコで開催された39th Annual Symposium of The Protein Societyに参加させていただきました。このような大変貴重な機会を賜りましたこと、日本蛋白質科学会の皆様に心より御礼申し上げます。
私にとって、今回が初めての海外での学会発表でした。正直なところ、自身の英語力に大きな不安を抱えており、「英語しか使えない中でうまく議論できるのだろうか」という心配と、「とにかく楽しもう」という前向きな気持ちが入り混じる中、サンフランシスコへと旅立ちました。
学会は、想像をはるかに超える熱気に満ち溢れていました。大きな2つの会場で2つのセッションが同時進行し、その合間には、Young Investigator Award受賞者による講演や、学生やポスドクが3分間で自身の研究のハイライトを紹介するFlash talk、そしてCoffee breakと称した参加者が自由に交流できる時間が設けられ、常にどこかで活発なコミュニケーションが生まれている、そんな印象を受けました。特に印象に残っているのが、Young Investigator Award受賞者による講演です。まるでドラマのような巧みなストーリー展開と、緩急のある堂々としたプレゼンテーションは、専門分野の異なる私ですら惹き込まれ、30分の講演があっという間に感じられました。まさにプレゼンテーションのお手本を目の当たりにし、自身の研究の面白さを伝えることの奥深さを改めて痛感しました。
幸運なことに、私もFlash talkのスピーカーに選んでいただき、3分間の発表に挑戦しました。大勢のネイティブスピーカーの中で、私の英語は非常に拙く感じ、緊張から言葉に詰まってしまう場面もありました。発表を終えた直後は悔しさと不甲斐なさで落ち込んでいたのですが、その後のポスターセッションの時間に、何人かの参加者が私のポスターの前に来て「さっきのFlash talk、良かったよ」と声をかけてくれたおかげで、少し救われた気持ちになりました。ポスター発表の間も、多くの参加者が私の拙い説明に耳を傾け、質問を投げかけてくれました。発表を聞いてくれた参加者の中には自身の専門分野と近い研究者もおり、踏み込んだ議論を交わせたことに喜びを感じました。

そして、授賞式にてポスター賞受賞者の一人としてスクリーンに自分の名前が表示された時には、大変驚きました。英語でのコミュニケーションが満足にできない時点で、他の参加者と同じ土俵にすら立てていないと感じていたからです。授賞式の後、見覚えのある一人の男性が私に声をかけてくれました。彼は、私のポスター発表の際に熱心に質問を投げかけてくれた参加者の一人でした。彼は「私があなたのポスターを審査したんだよ」と明かし、「あなたは、自分の研究を英語で十分に説明できていたし、研究の内容も良かった」と伝えてくれ、私は驚きと共に胸が熱くなりました。ポスター賞の記念品として、The Protein Societyのロゴが入った真っ赤なタンブラーと小切手をいただきました。タンブラーは早速自宅で愛用しており、それを使うたびに、サンフランシスコでの出来事が鮮明に思い出されます。

また、Annual Symposiumが開催される前日には、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAashish Manglik博士の研究室を訪問させていただく機会にも恵まれました。研究分野の第一線で活躍されている研究者の前で発表し、直接ディスカッションできた経験は、今後の研究を進める上での大きな励みとなりました。
サンフランシスコで過ごした5日間は、研究者としてだけでなく、一人の人間として私を大きく成長させてくれました。言葉の壁に臆することなく、伝えようと努力することの大切さ、そしてそれを受け止めてくれる温かさを肌で感じることができました。この貴重な経験を糧に、今後さらに研究活動に邁進していく所存です。最後になりますが、今回の海外渡航にあたり多大なご支援を賜りました日本蛋白質科学会に、この場を借りて深く感謝申し上げます。