概要
膜輸送体の活性測定では、精製したタンパク質をリポソームに再構成してプロテオリポソームを作製し、膜を介した物質の輸送を計測する手法が一般的に用いられる。基質の輸送を直接確認するアプローチとしては、放射性同位元素(\(\ce{^{3}H}\) や \(\ce{^{14}C}\) など)で標識した基質の利用や、質量分析によってリポソーム内に取り込まれた基質量を直接定量する手法が挙げられる。また、電気生理学的手法を用いて輸送に伴う電流や膜電位の変化を直接測定する技術も普及している。しかし、この手法は電荷の移動を伴わない電気的中性な輸送系や、抗菌ペプチドのように基質自体の電荷組成が複雑な系への適用は困難であるという課題がある。
一方で、プロトンを駆動エネルギーとするプロトン共役型の膜タンパク質では、基質の輸送に伴ってリポソーム内のpHが変動する。この現象を利用し、pH応答性の蛍光指示薬を用いて内部のpH変化をモニターすることで、輸送対象の電荷に依存せず、リアルタイムに基質輸送能を評価することが可能である。本稿では、プロトン駆動型の抗菌ペプチド輸送膜タンパク質であるSbmAを例に、その具体的な測定手法について紹介する。
イントロダクション
膜輸送体の機能解析において、精製膜タンパク質を人工脂質膜に再構成したプロテオリポソームの利用は、生体膜の複雑なバックグラウンドを排除し、タンパク質単体の活性を直接評価できる有用な手法である。これまで日本蛋白質科学会アーカイブでもその基本原理や詳細なプロトコールが公開されている(文献1,2)。本稿では、特に「プロトン駆動型(共役型)膜輸送体」の活性測定に特化したアッセイ系の構築について詳述する。
従来の活性測定では、放射性同位元素を用いた手法や質量分析、高度な電気生理学用セットアップが求められることが多く、専用の実験施設や高価な機器が必要であった。しかし、本稿で紹介するpH応答性蛍光指示薬を用いた測定系は、一般的な蛍光分光光度計があれば比較的手軽に構築できる点が大きな利点である。さらに、輸送の駆動力となる膜電位を簡便かつ確実に発生させる仕組みを取り入れている。具体的には、リポソームの内外でカリウムイオン(\(\ce{K+}\))の濃度差(内側高・外側低)を設け、カリウム選択的イオノフォアであるバリノマイシン(Valinomycin)を添加する。これにより、濃度勾配に従って \(\ce{K+}\) がリポソーム外へ排出され、内部が負に帯電した人為的な膜電位が形成される(図1)。これを駆動力としてプロトンと基質の共輸送を誘発し、その際のpH変動を蛍光モニターで追跡するアプローチである(文献3–5)。
一方で、プロトンの移動を指標とする蛍光強度モニターを実施する上で最大の障壁となるのが、リポソーム膜を介した「プロトンリーク」である。天然由来の混合脂質を用いた場合、膜のパッキングが不安定になりやすく、プロトンが漏れ出すことで正確なpH変動をモニターできないことがしばしばある。そこで本手法では、このプロトンリークを物理的に防ぐため、より強固な膜を形成できる合成脂質を使用している点を特長としている。本稿が、プロトン駆動型膜輸送体の機能解析をより簡便に行なう一助となれば幸いである。
装置・器具・試薬
- 装置
- 超遠心機 およびローター(ベックマン)
- 微量超遠心機(1.5 mLチューブに対応しているもの)
- 蛍光分光光度計(Cary Eclipse Fluorescence Spectrophotometer)
- プレートリーダー(562 nm波長が測定できるもの)
- 電気泳動一式
- 器具
- ガラス製試験管
- 100 μLおよび200 μLハミルトンガスタイトシリンジ
- 超遠心チューブ(ポリプロピレン製、1.5 mL)
- エクストルーダーExtruder(Avanti polar lipid)
- 0.4 μm フィルター(Avanti polar lipid)
- 蛍光測定用キュベット(X100 UV semi-micro cuvettes PMMA)
- 透析膜 MWCO: 50,000-100,000 Da(スペクトラム社)
- 96穴プレート
- Microspin G-25(cytiva)
- 試薬
- POPE: 1-hexadecanoyl-2-(9Z-octadecenoyl)-sn-glycero-3-phosphoethanolamine(Avanti polar lipid)
- POPG: 1-hexadecanoyl-2-(9Z-octadecenoyl)-sn-glycero-3-phosphoglycerol(Avanti polar lipid)
- DDM: n-Dodecyl-β-D-maltoside(Anatrace)
- Pierce BCA Protein Assay Kit(Invitrogen)
- BSA: ウシ血清アルブミン(Sigma)
- Pyranine: trisodium 8-hydroxypyrene-1,3,6-trisulfonate
- Valinomycin
- DMSO
- 液体窒素
実験手順
- リポソームの調製
- 脂質フィルムの作成
- 脂質の再懸濁と超音波処理
- 界面活性剤によるリポソームの不安定化
- 膜タンパク質の再構成
- バッファー調製
- 希釈法によるリポソームへの再構成
- 界面活性剤の除去
- 再構成タンパク質の確認と濃度定量
- SDS-PAGEによる再構成の確認
- BCAアッセイによるタンパク質の定量
- 蛍光色素のリポソーム内部への導入
- 凍結融解による膜の均一化
- 蛍光指示薬のプロテオリポソーム内への導入
- プロテオリポソームの精製
- 抗菌ペプチドを用いた活性測定
- バッファーおよび基質の調製
- 外液バッファーおよびコントロール群の準備
- 蛍光クエンチング観測による輸送活性測定
- データの解析と解釈
実験の詳細: 1日目
1. リポソームの調製
脂質フィルムの作製
- 脂質溶液25 mg/mLのPOPEおよびPOPG(Avanti Polar Lipids製、クロロホルム溶液として調整済み)を、重量比が3:1となるようにハミルトンガスタイトシリンジで試験管に分取して混合する(POPE溶液: 240 μL、POPG溶液: 80 μL)。
- 溶液の表面に窒素ガスを穏やかに吹き付け、試験管内部のクロロホルムを揮発させ、底壁面に均一で透明な薄い脂質フィルムを形成させる。
- 窒素ガス下で1時間程度乾燥を行い、溶媒を完全に除去する。
リポソームの生成
- 乾燥させた脂質フィルムにMilliQ水を加え(400 μL)、最終濃度が20 mg/mLになるように再懸濁する。
- 白濁していたリポソーム溶液が半透明になるまで、ウォーターバス型の超音波破砕機で処理を行う(おおよそ20分程度)。
- 保存する場合は、この段階で液体窒素により急冷して−80℃で保存する
界面活性剤によるリポソームの不安定化
- 最終濃度1.0%となるようにDDM(n-Dodecyl-β-D-maltoside)を添加し、リポソーム膜を不安定化させる。
- リポソーム溶液の色がより透明(クリア)に近くなることを確認する。これによって、リポソームに膜タンパク質が組み込まれやすくなる。
2. 膜タンパク質の再構成
バッファー調製
再構成用バッファー組成:100−200 mL調製し、0.2 μmフィルター処理を行なう。透析用は別途2 L調製する。
- 5 mM HEPES-KOH pH 6.8, 120 mM \(\ce{KCl}\), 2 mM \(\ce{MgSO4}\)
希釈法によるリポソームへの再構成
- 精製したSbmA(1.0 mg/mL)と、上記の不安定化リポソーム液(300 μL)を、タンパク質:脂質の重量比が1:4となるようにチューブ内で混合する。
- 混合液を氷上で30分間静置する。
- 混合溶液を超遠心用チューブに移す。
- 60 mLの再構成バッファーを3.のチューブに素早く混合し、急速希釈する。
- チューブを上下に5回ほど反転させて混合する。
界面活性剤の除去
- 前項の超遠心チューブを超遠心機にセットし、超遠心分離(約200,000×g、2時間、4℃)を行う。
- 上清を捨て、沈殿したプロテオリポソームを少量(500 μL〜1 mL程度)の再構成用バッファーで再懸濁する。
- 残存する界面活性剤を完全に除去するため、透析チューブにサンプルを入れ、2 Lの再構成用バッファーに対して4℃で一晩透析を行う。
実験の詳細: 2日目
3. 再構成タンパク質の確認と濃度定量
透析チューブからプロテオリポソーム溶液を回収し、新しいエッペンチューブに移す。
SDS-PAGEによる再構成の確認
回収したサンプルの一部を分取し、SDS-PAGEを行ってタンパク質のバンドおよびリポソームの存在を確認する(図2)。
※注記:この手順は、目的の膜タンパク質が問題なくリポソームに再構成されていること、および凝集等が生じていないかを確認するために行う(詳細な手法は日本蛋白質科学会アーカイブの文献6等を参照)。なお、再構成の成否確認だけであれば、1日目の超遠心後の再懸濁時に行ったサンプリングを用いても構わない。
BCAアッセイによるタンパク質の定量
- ウシ血清アルブミン(BSA)を用いて、検量線作成用の標準溶液を複数濃度調製する。
- プロテオリポソーム溶液を再構成用バッファーで適宜希釈する(再構成したタンパク質量にも依存するが、10倍希釈程度で行うことが多い)。
- BCAアッセイキットの標準プロトコールに従って反応させ、吸光度を測定してタンパク質濃度を算出する。
※注記:リポソーム懸濁液は強い光散乱を起こすため、汎用される280 nm吸光度測定によるタンパク質定量は適用できない。必ずBCA法など脂質の干渉を受けにくい手法を用いること。
4. 蛍光色素のリポソーム内部への導入
凍結融解による膜の均一化
- 透析後のプロテオリポソーム、液体窒素を用いた急速凍結と、室温での融解を繰り返す凍結融解(Freeze-thaw)を3サイクル行う。
- プロテオリポソームを専用の超遠心用エッペンチューブに移し、超遠心分離(100,000 ×g、30分、4℃)を行い、沈殿としてプロテオリポソームを回収する。
リポソーム内部への蛍光指示薬導入
- 最終濃度1 mMとなるように、再構成用バッファーを用いてPyranine溶液を調製する。
- 回収した沈殿を、1 mMのPyranine溶液300〜500 μLで再懸濁する。
- 再び液体窒素を用いた凍結融解を3サイクル行い、リポソームを一時的に破綻・再形成させることで内部空間にPyranineを取り込ませる。
- 0.4 μmのフィルター膜をセットしたエクストルーダーを用いて、サンプルを11回押し出し、リポソームの粒子径を均一に揃える。
プロテオリポソームの精製
- 処理後のサンプルを超遠心分離(100,000 ×g、30分、4℃)にかけ、取り込まれなかった遊離のPyranineを含む上清を捨てる。
- 沈殿の表面に付着したPyranineを取り除くため、少量の再構成用バッファーを静かに加え、ペレットを崩さないように表面だけを洗って上清を捨てる。
- 洗浄したペレットを200 μLの再構成用バッファーで再懸濁する。
- 外液に残存する過剰なPyranineを完全に除去するため、あらかじめPyranineを含まない再構成用バッファーで平衡化しておいたMicrospin G-25カラムにサンプルをアプライし、遠心を行って精製したプロテオリポソーム液を回収する。
5. 抗菌ペプチドを用いた活性測定
バッファーおよび基質の調製
- 以下の組成で測定用バッファーを調製する。
- 5 mM HEPES-KOH pH 6.8, 1.2 mM \(\ce{KCl}\), 2 mM \(\ce{MgSO4}\)
- 5 mM HEPES-KOH pH 6.0, 1.2 mM \(\ce{KCl}\), 2 mM \(\ce{MgSO4}\)(コントロール・リーク確認用)
- イオノフォア溶液として、1 mMのValinomycin溶液をDMSOで調製する。
- 抗菌ペプチド溶液各種(BleomycinやMccB17など)を、5〜10 mMのストック溶液としてDMSOや測定用バッファーで調製する。
外液バッファーおよびコントロール群の準備
測定の駆動力となるカリウム濃度勾配を形成するため、キュベット内での最終液量が正確に1 mL(1000 μL)となるよう、測定用溶液を準備する。プロテオリポソーム溶液(10 μL分を想定)に合わせて、以下のように各条件の溶液990 μL分をあらかじめ調製しておく。
- 実測定: Valinomycin 10 μL + 基質10 μL + 測定用バッファー(pH 6.8)970 μL
- コントロール1: 測定用バッファー(pH 6.8)のみ990 μL
- コントロール2: Valinomycin 10 μL + 測定用バッファー(pH 6.8)980 μL
- コントロール3: 基質10 μL + 測定用バッファー(pH 6.8)980 μL
- コントロール4: 測定用バッファー(pH 6.0)のみ990 μL
蛍光クエンチング観測による輸送活性測定
- 蛍光測定用キュベット内に、タンパク質の最終濃度が15 μMとなる分量のプロテオリポソーム(10 μL)を分注する。
- 蛍光分光光度計の測定条件を以下のように設定し、キュベットをセットする。
- 励起波長:460 nm
- 蛍光波長:510 nm
- スリット幅:5 nm
- データ間隔:0.5秒
- 測定時間:5−10分
- 準備しておいた各外液バッファー(990 μL)を一気に加える。
- 2回ほど軽くピペッティングを行って素早く混合し、直ちに測定を開始する。
データの解析と解釈
- 取得した蛍光強度データを、縦軸に蛍光強度、横軸に時間として経時的にプロットする(図3)。
- 異なる条件や複数回の測定データを直接比較できるようにするため、測定開始直後(基底状態)の蛍光強度を「1」とする正規化を行う。具体的には、各タイムポイントの蛍光強度の数値を、測定開始時の蛍光強度の数値で割って相対値を算出する。
- 実測定の条件においてのみ、有意な蛍光強度の低下(蛍光クエンチング)が観測されれば、リポソーム内部にプロトンが流入しpHが低下したことを意味するため、プロトンと基質が共輸送されていることを示している。
- コントロール4(pH 6.0のバッファー)を添加した際に蛍光の急激な低下が見られないことを確認し、リポソーム膜からの意図しないプロトンリークがないことを証明する。
工夫とコツ
精製膜タンパク質
本稿ではDDMを用いて精製した膜タンパク質を使用した。対象となるタンパク質の種類にも依存するとは思うが、筆者の経験上、DDMで適度に不安定化したリポソームを用いる条件が、最も再構成の効率が良いように感じている。DDMは内膜タンパク質の可溶化・精製に用いる界面活性剤としても非常にポピュラーなものである。そのため、条件検討に迷った際は、まずは難しく考えずにDDM精製したものを利用するのが良いように思う。
脂質溶液の乾燥(フィルムの作成)
窒素ガスでクロロホルムを揮発させる際、ごくまれに表面から遠い部分にクロロホルムが僅かに残留し、フィルムが白っぽくなってしまうことがある。筆者の経験上、このような状況のまま実験を継続すると、急速希釈したあとの遠心分離で明らかな白い沈殿が見られた。すなわち、残留した微量の溶媒が原因でタンパク質が変性してしまうのである。
このようなときは、無理に長時間の乾燥を続けるよりも、少量のペンタンを加えて再溶解させ、再度乾燥させる操作を2回ほど繰り返すと良い。これにより綺麗な透明のフィルムになり、以降の再構成時にも沈殿がみられるようなトラブルを確実に防ぐことができるようになった。
測定時のカリウム濃度差について
本稿では、リポソーム内外で100倍の \(\ce{K+}\) 濃度差(内液120 mM / 外液1.2 mM)を設け、Valinomycinを添加することで膜電位を発生させて輸送を駆動した 。実は、この内外の \(\ce{K+}\) 濃度差を人為的に制御して任意の膜電位を設定することで、単に輸送を駆動するだけでなく、基質1分子の輸送に対してプロトンが何個共輸送されるかを熱力学的に算出することが可能である。具体的には、リポソーム内外のpH差と基質の濃度勾配を一定に設定した上で、様々な \(\ce{K+}\) 濃度差(膜電位)で蛍光測定を行う。すると、ある特定の電位において、プロトンの流入(蛍光の減少)も流出(蛍光の増加)も起こらない、見かけ上の正味の輸送がゼロとなるポイントが見つかる。これは「平衡電位(Reversal potential)」と呼ばれ、輸送機構自体には依存しない熱力学的な値である。この時の膜電位の数値を、設定した基質濃度勾配とpH勾配を用いた理論式に当てはめることで、輸送されるプロトンと基質の比率(n/m)を正確に導き出すことができる。実際、本稿の参考とした研究(文献7,8)では、この手法を駆使することで、細菌由来のプロトン駆動型ペプチド輸送体が、「トリペプチドの輸送には3個のプロトンを共輸送する」のに対し、「ジペプチドの輸送には4個(あるいは5個)のプロトンを共輸送する」という、基質サイズに応じてプロトンのストイキオメトリーを変化させているという事実を明らかにしている。今回筆者が測定対象とした抗菌ペプチドの場合、ペプチド自体の正確な濃度定量が難しく、プロトン数の算出に足る厳密な条件設定には至らなかった。しかし、基質の濃度勾配を正確に制御できる系であれば、膜タンパク質の動作原理に迫る非常に強力な解析ツールとなるため、興味のある読者はぜひそれらの文献を参考に挑戦してみてほしい。
実験の安全
クロロホルムは揮発溶液性のため、脂質溶液の混合および乾燥はドラフト内で行なう。
文献
- 李 勇燦, 蛋白質科学会アーカイブ, 11, e087 (2018)
- 中村 寛夫, 蛋白質科学会アーカイブ, 6, e073 (2013)
- Ghilarov D. et al., Sci. Adv., 7, eabj5363 (2021)
- Travin D.Y. et al., mBio, 14, 1 (2023)
- Ettema T.W. et al., Nat. Commun., 17, 5619 (2026)
- 恩田 真紀, 蛋白質科学会アーカイブ, 1, e011 (2008)
- Minhas G.S. et al., eLife, 7, e34995 (2018)
- Parker J.L. et al., eLife, 3, e04273 (2014)
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図1:蛍光指示薬を用いたpH変化による輸送活性測定の原理
Pyranineは中性付近のpHでは緑の蛍光を発しており、pHが低下するとともに蛍光強度が弱くなる。この現象を利用し、リポソーム内にプロトンが基質と同時に取り込まれた際の内部pHの低下(蛍光強度の減少)をモニターすることで、間接的に膜輸送の有無を評価することが可能となる。ここで重要なポイントとなるのが、イオノフォアであるValinomycinを用いて膜電位を形成することである。あらかじめ \(\ce{K+}\) 濃度がリポソーム内で高く、外で低くなるように設定されているため、Valinomycinを添加すると、濃度勾配に従って内部の \(\ce{K+}\) が外部へと排出される。その結果、リポソーム内外で電位差が生じ、リポソーム内部は正電荷を失って負に帯電する。この負の膜電位が引き込む駆動力となり、SbmAによる基質とプロトンの輸送反応が開始される仕組みである。本図は文献3のFigure 2Cより引用、一部改変した。 -
図2:SDS-PAGEによるSbmAのリポソームへの再構成の確認
本ゲルには、野生型(WT)に加えて実験で用いた各種変異体も併せて泳動している。SbmAは単量体の分子量が約45 kDaの二量体タンパク質であるが、高度に疎水的な膜タンパク質特有の性質により、SDS-PAGEにおいては予測分子量よりもやや低分子側に主要バンドが検出されることが多い。またバンドがスメア状になりやすいのも特徴である。各レーンの配置は左から順に、分子量マーカー、SbmA WT、E193A、E203A、E276A、E287A、およびE378A変異体である。 -
図3:蛍光測定による輸送活性測定
(左)はコントロール条件、(右)は基質および膜電位 (駆動力) の両方が存在する条件での測定結果をそれぞれ示す。コントロール条件では経時的な蛍光強度の変化が見られず、これは基質輸送が起きていないことに加え、リポソーム膜からの非特異的なプロトンリークが生じていないことを示している。一方、基質と膜電位の両方が存在する条件では、明らかな蛍光クエンチング(蛍光強度の低下)が観測された。これはリポソーム内部へのプロトンの流入を意味しており、SbmAを介した基質とプロトンの共輸送が正常に行われたことを示している。